うくひすのこほれる涙

読書おぼえがき

はかなき花

平資盛都落ちし入水した後、資盛の恋人であった建礼門院右京大夫が、ありし頃を想い綴った「建礼門院右京大夫集」は、長い詞書と和歌が繰り返されている。

 

延々と続く彼女の「追憶」は、まるで時が止まったよう。

 

そのありし頃の追憶の一片として、朝顔が歌われる。

 

 

・・・・・・・

やまざとなるところにありしをり

艶なる有明に起き出でて

まへちかき透垣に咲きたりしあさがほを

「ただ時のまのさかりこそあはれなれ」とて見しことも

ただ今の心地するを

「人をも花は げにさこそおもひけめ

なべてはかなきためしにあらざりける」

など思ひつづけらるることのみさまざまなり。

 

 

身のうへを げにしらでこそ あさがほの 花をほどなき ものといひけめ

 

有明の 月にあさがほ 見しをりも わすれがたきを いかでわすれむ

・・・・・・・

 

 

「あさがほ」には、朝の寝起きの顔の意味があり、彼女は、資盛の後朝の顔を朝顔の花と重ねあわせて歌っているのだそうな。

 

 

 

はかなきものほど

 

美しく

 

そして

 

永遠かのような

 

そんな印象を人に与えるもだ。