平安の色から
「建礼門院右京大夫集」を読み終わって、「源氏物語」を読んでみようと思ったのには、ワケがある。
無論、日本が世界にほこる古典文学といえば、源氏、だし、それを読んでおかねばっ、というのもあったが。
「建礼門院右京大夫集」には、源氏についての知識が前提になっている部分もある。
それは、文芸に限らず、絵画その他、古くからある分野では、よくあることだ。
現時点より前の時代の事柄を知っていて当然、で作られている。
で、「建礼門院右京大夫集」で一番気になり、一番分かり難いのが衣装の説明だった。
古語辞典などには、昔の日本の色見本のようなページがあったりするけれども、これが、ただポスターカラーでべた塗りしただけの色見本のようなもので、さっぱりイメージしにくい。
そこで、何かないかと探した所、やはり同じようなところに興味のわく人は、世の中にはいるもんだ。
にんげんだもの。
その帯に書かれている宣伝文句が以下。
「『源氏』千年の色彩がいま甦る
五十四帖に描かれた襲の色目を完全再現
平安の夢368の色布総覧」
源氏に出てくる衣装の色を、実際に布に染めて再現した人の著作なのだ。
いやあ、労作とは、このことだ。
どんだけ手間ひまかかることやら。
衣装の反物だけでなく、例えば、「朝顔」に出てくる鈍色の御簾が再現されていたり、絹だけではなく、「藤衣」も再現されている。
私は、子供の頃から喪服について、謎に思っていたことがある。
普通、喪服として黒い衣装が着られることが多いと思うのだが・・・
私の子供時代に父が亡くなったのだが、その時に私に着せられた服が、黒ではなかったのだ。
ある方の解説によれば、大半の日本人が喪服として黒を着用するのが当たり前になったのは、明治以降なのだそうな。
近代国家づくりの一環で、葬儀にも西洋の様式に合わせる必要があったのだそうな。
それで、葬儀に着る衣装が黒に。
しかし、今でも古のあり方を受け継いで守っている地域もあるそうな。
たぶん、あの葬儀の時、母は、父の故郷のしきたりに合わせて、あえて私に黒ではない服を着せたのかも知れない。
なにせ古くさいところだから。
「藤衣」の説明と写真を見て、昔からの謎が氷解したのであった。
ところで、この種の日本の古典に出てくる衣装やらを探っていくと、近年流行した韓流ドラマの時代劇の場面を連想したりする。
その昔、環太平洋ならぬ、環日本海文化というものが隆盛したというのも、『なるほどな』と思えてくる。
日本最古の神社の形態と、朝鮮半島の古代の神社の形態と似通っているらしいが・・・