うくひすのこほれる涙

読書おぼえがき

もののけの正体

源氏では、やたら「もののけ」の話が出てくる。

 

もののけ」にとらわれて、病になったり、挙げ句は命までも失ってしまったり。

 

もののけ」によって、現代で言えば、精神疾患のようになってしまう人の多いこと多いこと。

 

無論、源氏はフィクションではあるけれども・・・

昔から、心の病にとらわれてしまう人は多かったのかもしれないなぁ・・・

とも、思うのだった。

 

心のストレスが、やがて体にさわるようになる、というのは、今でもよく聞く話である。

 

まして、平安の都の貴族社会なぞ、究極のムラ社会だから、気疲れすることは上層階級ほど多かったやもしれぬ。

 

 

 

ところで、今年の春から「もののけ」ならぬ「四十肩」なるものに悩まされた私は、それにきくものはないかと、いろいろ健康本を見て実戦してきている。

 

『これはきく!』と思った本が、これ。

「弱ったからだがよみがえる人体力学」と「弱ったカラダが復活する真呼吸ストレッチ」。

各々違う著者なのだが、基本はこういうことだと思う。

前傾姿勢など悪い姿勢が恒常化すると、深い呼吸が出来なくなる。

深い呼吸が出来なくなると、心身のバランスが崩れ病になり、さらにストレスが増し、姿勢も崩れ酸欠状態になり・・・という悪循環に陥る。

 

なんでもやってみるものである。

こうした本のおかげで、「四十肩」は、かなり改善してきた(腕が上がるようになるくらいは一週間くらいで治った)。

同じ悩みを抱えた方には、おすすめ本である。

 

元々体は柔らかい方で、小学生の時、ヨガにはまって難しいポーズでも出来たくらいだったが、年を重ねて行くと、知らず同じような姿勢でいることが多くなる。

 

仕事にせよ家事にせよ勉強にせよ、社会生活を送る大人の姿勢というのは、どうしても前傾姿勢であることが多くなってしまう。

そして、それが体のクセになり、どんどん固まっていって、ある日、四十肩だの五十肩だの、ぎっくり腰だの内臓疾患だの、いろんな病となって結果に現れてくる。

 

近頃の若者の心の病と姿勢というのにも関係がありそうに思える。

スマホやパソコンやらの画面に我を忘れて夢中になっている若者って多いが、これでは姿勢は悪くなるし、深い呼吸なぞ出来なかろう。自律神経が乱れるのは、自然のなりゆきとも見える。

 

 

 

さて、本屋で「四十肩」本をいろいろ見ていると、こんなことを書いてる本もあった。

その昔、今のような医療技術がない時代、「四十肩」というのは「死」を意味する病だったのだそうな。

 

たしかに、自分で経験してみて実感したのだが、ある日、それまで上がっていた肩が上がらなくなるというのは、一種の恐怖だ。

『一体どうなってしまったのか?ワテの体はっ!』と、それまでに無い感覚に驚くのである。

当然のように出来ていた日常的な事柄に支障が出るのだから、そこから「人生の終わり」を予感するのは、さもありなん、である。

 

 

それに、平安貴族のあの衣装では・・・

特に女性の場合、前傾姿勢しか取れなかろうし、なにせ、重そうだし、肩や背筋、腰には、過負担だ。

おまけに同じ姿勢でじーっとおしとやかにしていれば、筋力は嫌でも下がる。

背筋を伸ばし、胸を張って深い呼吸をするなんて、ほんの若い間だけになってしまいそうだ。

これでは、心身のバランスを崩して、「もののけ」を呼び込んでも仕方なかろう。

 

というか・・・

 

悪い姿勢こそが、「もののけ」ではあるまいか。